今から薬学部に入るのはアリか?副店長が薬剤師になりたいらしい。
私は調剤併設のドラッグストアで働いているため、ドラッグストア側のスタッフともよくコミュニケーションをとる。
先日、副店長が薬剤師の資格を取りたいと相談を持ちかけてきた。
どこまで本気なのかは分からないがとりあえず資格取得方法やどんな大学があるのかなどを調べているところのよう。
副店長は登録販売者という一般用医薬品を販売する資格をもって働いているが、正直待遇はあまり良くない。
勤務時間も長くなりがちで店舗は土日祝関係ないので休日も少なめだ。
正社員なら年末年始は容赦無く出勤である。
それでいて給料は手取りで20万円台前半(たぶん)といったところ。
みていて思うが全く割りに合わない。
土日祝休みで営業時間も店舗側より短くやっている薬局を横目に見ていたら、そちらの芝が青く見えてしまうのは分からないでもない。
仮に今副店長が30歳だとしてこれから薬学部に入り、薬剤師資格をとって働くという選択肢をとるのはアリだろうか?
私立薬学で通常ルートならナシかな
私立薬学部は大学によりバラつきはあるがおおよそ1,200万円ほどかかる。
普通に働いていれば得られたはずの6年間もの収入がなくなるうえにプラスαの学費がかかる。
今の年収が400万だとしたら6年で2400万円の機会損失。
プラス1200万円の学費を合わせて3600万円のディスアドバンテージが完成(生活費はどちらにせよかかるので計上していない)。
ストレートで進級・卒業・合格しても働き始められるのは37歳。
それで60歳まで働くとして薬剤師期間は23年。
資格があることで年収が200万円増えたとしても23年で4600万円。
先程のディスアドバンテージを差し引いて1000万円しか儲からない。
また、この変化の大きな時代に薬剤師の待遇が6年後、10年後、20年後とどうなっているか全く分からず不確定要素が大きい。
国立・公立の薬学部なら学費は6年間で350万円だからまだマシかな。
もしくは微妙な偏差値の私立大学で学費免除の特待生制度を狙って入るか。
自分なら大人しく働き続けるか、別の有望な業界に転職するよう考えるだろう。
もしくは一番簡単な方法は正社員の嫁を見つけること。
二人で世帯年収800万円稼げば、今の時代の日本ではかなり恵まれた部類に入るだろう。
金銭的に余裕があるならアリだろう
もちろん、資格が無いよりあったほうがいい。
日本は良くも悪くも既得権益を壊すということが起きにくいお国柄なので、資格を持っていれば当分の間職に困ることも無いだろう。
先述のようにコスパは悪いが、もしお金は余っているが労働環境に困っているというタイプであれば検討の余地ありと思う。
最近24時間営業の薬局などもポツポツと見かけるが、コンビニのようにそれがマジョリティになるとは到底思えない。
有資格者を全ての店舗で24時間隙間なく配置するなど不可能だろうから(薬学部が今の10倍くらいの数になれば或いは)。
給与などの待遇面に関しては今後どうなっていくかは不透明である。
私的には今後薬剤師の給与が上がっていくことはないだろうと思っている。
国は医療費を削減したがっているのでたとえ高齢者が増えようとも医療費という全体のパイが増えることはない。
人手不足という人材の需給関係で上がっていた給与も今後薬剤師の数が増えていけば落ち着いてくるだろう。
業界の成長も頭打ちになってきており、実際調剤薬局では給与はここのところあまり良くなっていない。
求人情報では給与の良さではなく「アットホームな職場」「働きやすい環境」などといった漠然としたアピールポイントが散見される。
病院薬剤師の給与は今も昔も低空飛行のまま。
ここのところ唯一成長していたドラッグ業界ももうあと数年で頭打ちがきて、そうなれば薬剤師の人件費にもメスが入るだろう。
実際自分が勤めているドラッグストアでも、ここ数年で残業などについては厳しくなってきたし、給与制度の大幅な見直しも行われた。
新卒初任給も自分たちが入社した頃より1割ほど減っている。
自分としてはいい時代に入社できたなと思いつつ、今後は厳しくなるのだろうとちょっと警戒感を抱いた。
ということでこれから6年間薬学部に入り直して資格を取っても金銭的には恵まれないかもしれないということである。
まとめ
副店長がどんな意図で薬剤師になりたいと言ったのかの本当のところはよく分からないが、まあやりたいならやればいいと思う。
ただし金銭面を狙うならちょっと微妙かなと思う。
専門職として働きたいとか、労働環境を改善したいとかならまあありだとは思うが。
ただ、そもそもそんな風に思う従業員が生まれるような環境を作ってしまっている会社が変わってくれたら。
それが一番いいことなんだろうけど。
なかなか難しいだろうな。